近所の店でもらってきた段ボールの箱を切って、
船舶用のペンキで絵を描き始めたそうです。
妻を亡くして一人になり3年目、70歳を過ぎてのことでした。
どんな絵か見たいと思いました。
「つるとはな」第5号に特集されているというので、
図書館で借りてきました。
ずっと船乗りだった彼は、
記憶の中の船や景色を書いていました。
何かに突き動かされるように、部屋の中で、
一日中書いていたそうです。
「あなたたちは目の前にあるものを描くけれど、
私は知っていることを描く」と。
記憶をたどり絵を描くことは、
今まで生きてきた人生を振り返る
作業だったのでしょうか。

丸木スマの絵は、ずっと昔に見たことがあります。
丸木美術館だったのでしょうか。
持っている画集は1984年初版となっています。
自由奔放というか、感じたようにいきいきと
描かれた絵は、何と色彩豊かでおおらかなこと!
楽しんで描いているから、その楽しさが
見る方にも伝わってきます。いいなあ。
そのうち院展にも何度も入選して、
広島で個展をすることになりました。
知事さんや市長さんが見に来て、いろんな人が来て、
丸木トシさんいわく、
「おばあちゃんは、腰かけたり立ったり、おじぎをしたり、
写真をとられたり、くたびれてしまいました。
『わしはもう、展覧会はこりごりじゃ。』
と、いいました。」
目に浮かぶようです。
スマさんは、ただ楽しんで絵を描くだけで十分だったのでしょう。

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