2020年02月23日

時代遅れ

昨日、「伝言板」のことを書いたら、
茨木のり子さんの詩 「時代遅れ」を思い出しました。
茨木さんは、なんと潔い!


 時代遅れ  茨木のり子


. 車がない
 ワープロがない
 ビデオデッキがない
 ファックスがない
 パソコン  インターネット  見たこともない
 けれど格別支障もない

   そんなに情報集めてどうするの
   そんなに急いで何をするの
   頭はからっぽのまま

 すぐに古びるがらくたは
 我が山門に入るを許さず
  (山門だって  木戸しかないのに)
 はたから見れば嘲笑の時代おくれ
 けれど進んで選び取った時代おくれ
       もっともっと遅れたい

 電話ひとつだって
 おそるべき文明の利器で
 ありがたがっているうちに
 盗聴も自由とか
 便利なものはたいてい不快な副作用をともなう
 川のまんなかに小舟を浮かべ
 江戸時代のように密談しなければならない日がくるのかも

 旧式の黒いダイヤルを
 ゆっくり廻していると
 相手は出ない
 むなしく呼び出し音の鳴るあいだ
 ふっと
 行ったこともない
 シッキムやブータンの子らの
 襟足の匂いが風に乗って漂ってくる
 どてらのような民族衣装
 陽なたくさい枯草の匂い

 何が起ころうと生き残れるのはあなたたち
 まっとうとも思わずに
 まっとうに生きているひとびとよ
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posted by kaze at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月22日

伝言板

携帯を持ってない友人と、
神戸で待ち合わせました。
電車が着く時間を伝えていたら、
駅の改札を出たところで、
ちゃんと待っていてくれました。
最近はみんな携帯を持っているので、
もし会えなかったら、電話すればいいのですが、
携帯を持っていないと、もし会えなかったら、と
ちょっとドキドキしました。
久しぶりの感覚。
でも、ちょっと前までは、みんなそうだったのです。
「どこそこで何時」で、待ち合わせ。
時には、行き違いになって会えないことも。
だから、改札を出たところには、
伝言板があって、
「1時間待ちました。もう帰ります。」
などどチョークで書いてあったりしました。
そういえば、もう、伝言板を見ることはありません。

私はいつも車で出かけることが多いので、
久しぶりで電車に乗ったら、
乗っている人は、ほとんどの人が
スマホの画面を見ています。
窓の外の景色なんて誰も見ていません。
何か、異様な光景です。
そのうち異様とも思わなくなるのでしょうね。

例えば、私が、何かについて話すと、
若い人は、さっとスマホを出し、すばやく検索して、
「これですね。」と言う。
そうして、きっとわかったつもりになっているんだろうな。
「それは、ちょっとちがうけど・・。」と言っても、
あまり関心がなさそうで、
私も話す気持ちをそがれてしまう。
知らないことを知るって、すごくワクワクしないのかなあ。

どこか知らないところへ行って、わからなかったら、
私は誰かに聞いた方が早いので、すぐ聞きますが、
若い人は人に聞かないで、スマホでしらべます。
聞くとまた別のことまで教えてくれたりすることも
あるのになあ。
便利になったのでしょうが、
何か大切なことを失っていくような気がしてなりません。

時代遅れかもしれませんが、
携帯なしの生活って、いいなあ、とつくづく思います。
その友人は、もちろんメールもしないので、
手紙が届きます。
何日か、かかって。
彼女の周りでは、時間がゆっくり流れている気がします。

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posted by kaze at 21:13| Comment(3) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月21日

つつんでひらいて

装幀者菊地信義さんの仕事をドキュメントした
映画「つつんでひらいて」を見ました。
本好き、紙好きにはたまらない映画でした。
菊地さんが、紙にこだわり、文字にこだわって、
その本の本質的なものを、見える形に作り上げていく作業は、
発想から製本に至る創造の現場に
立ち会わせてもらっているようで、わくわくしました。
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今は、装幀もコンピューター上で作る人がほとんどだと思いますが、
菊地さんはすべて手作業で行っています。
活字見本で選んだ文字をコピーし、切り貼りし、
本の見本を作っていく。
鉛筆、定規、ハサミ、糊、手が動く動く。
変わっていく時代の流れの中で、
ずっと変わらない手を使うものづくりの行程。
こうでなくっちゃ。
コンピューターでは手触りや温かさは伝わりません。

私も以前、「つめくさの信号」という詩誌の
編集にかかわっていたことがあって、
菊地さんと同じように、文字をコピーし、
切り貼りして、印刷屋さんに渡す版下を
作っていたことがあります。
その作業を懐かしく思い出しました。

印刷、製本の現場にいる人たちも、
知恵を出し合い、本が出来上がっていく。
菊地さんをはじめ、本を作る人たちの
本への愛情が伝わってきて、心から嬉しく、
見終わった後、すがすがしい幸せな気持ちになりました。

映画の中で、先日講演を聞いたばかりの若松英輔さんの
「イエス伝」が出てきたのも驚きでしたし、
画面からあふれる菊地さんの人間性が、
とっても素敵でした。
「デザインは設計ではなく『こさえること』」
「他者があってのデザイン」
「他者がないと人は存在しない」など
心に深く刻まれる言葉も印象的でした。

https://www.magichour.co.jp/tsutsunde/




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